表現とその先に

「久しぶり!元気にしてる?」

メッセージを送ってくれたのは高校時代の友人だ。 彼女と最後に会ったのは、もう2年以上前だろうか。

偶然同じ日に、同じ美容院に行っていて、シャンプー終わりの彼女に声をかけて、その後お茶をした。

そんな日のことを思い出しながら「元気だよ~!」と返信をすると、彼女から届いたのは思いがけない誘いだった。

「じつは今、ランウェイショーに出演するモデルさんを探していて、よしののことが思い浮かんだから、ぜひ出演してほしいんだけど…」

突然のことに驚いたけど、直感で感じる「面白そう」という気持ちは誤魔化せなくて、話を聞いてみると、どうやら普通のファッションショーではないらしい。

「自分の人生と向き合って、在りたい姿を表現する」 そのコンセプトは、まさに今、こたつを出したばかりの部屋で、今後の人生を決め切れていない私に刺さるものだった。

働き出して3年目。教職員をしている私は、受け持つ生徒と一緒に仕事を卒業する。 卒業まであと半年を迎えた今、次に進む道を決め切れずにいた。

働かないといけない気持ちは分かるけど、この3年で気付いた「やってみたいこと」にチャレンジしてみたい。 でも、その選択をする勇気がない。

学生時代はダンスを通して自由に自分を表現して、在りたい私の姿で生きてきたはずなのに、今、生きている私は過去の私とは全然違う。

流れるように過ぎていく日々に遅れを取らないよう、毎日必死にしがみついている。 やらなきゃいけないことはたくさんあるはずなのに、心の奥底に隠れているのは「窮屈」の2文字で、その2文字に気付かないように、私は今日も必死に仕事をする。

そんな葛藤を抱えていた私にとって、友人が誘ってくれたランウェイショーへの出演は夢のような話で、正直「やってみたい」という気持ちでいっぱいだった。

でも、進路も決まっていないし、迷惑だってかけるかもしれない。 ジワジワと浮かんでくる「やりたい気持ち」が溢れてしまう前に、彼女に断りのメッセージを送ろう。そう思った。

「これで良かった。迷惑をかけるのが一番嫌だから」 そう自分に言い聞かせていると、彼女から「よしのの予定に合わられるよ。一緒にやろう!」と返信が届いた。

きっとほかのモデルさんたちは、予定を合わせているんだろう。 なのに私だけ、いいのかな?と申し訳なく思う気持ちと、それでも「やってみたい」と思う気持ちが、胸のなかで渦巻いていく。

「一緒にやりたいです」

送ったメッセージに後悔はなかった。 彼女が「一緒に表現したい」と思ってくれた私の人生をランウェイで表現したい。

この一歩は、私が「私らしさ」を表現するためのはじまりの一歩。

「表現とその先に」

創作:響あづ妙
撮影:わっちゃん

※この小説はモデルさんのインタビューを元に創作しております。

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