日常に夢

何もない場所でバスを待っている。時刻は21時を過ぎた頃だろうか。

働いていた工務店が移転となり、縁もゆかりもない山奥で働き始めて2ヶ月。 決してアクセスが良いとは言えない場所で、自宅に帰るためのバスを待つこの時間にも、実はかすかな楽しみがある。 それは、山の上から見渡すことのできる、都会の夜景だった。

空気の澄んだ場所から見える夜景の美しさは、忙しい日々の楽しみになっていた。

私は、日々の中に喜びや楽しみを見つけることが得意だ。

工務店以外の場所でも働いていた私の楽しみは、高校時代の親友と働く大学での仕事だった。 優しくて人のことを思いやることのできる親友は、1年ほど前に「やりたい」と思ったランウェイショーを自分の手で生み出し、形にした。

彼女からイベントの話を聞いたのは、かれこれ2年近く前。 2人で街を歩いてるとき、「自分と向き合う機会が多くの人に生まれたらいいね」と笑いながら、話す親友の目は輝いていて、それはどこか妄想のようで、傍から見れば大きな夢なのかもしれない。でも私は、彼女ならきっとできる。そう思った。

それから日が経ち、親友はあの日話した想像を本当に形にして、誰かが一歩踏み出すキッカケを作るランウェイショーを開催した。

1回目の公演を観に行った私は、彼女が本気で形にした「自分の人生と向きあう機会」に魅了され、何か自分にもサポートできることはないかと、初めての自主企画となるプロジェクトのスタッフを買って出た。

彼女が作ろうとしている世界は、愛と優しさに溢れていて、そんな場所のお手伝いをすることが楽しみだった私は、慌ただしく動く日々の中でも、親友のイベントに携われるワクワクを忘れずに、毎日を生きていた。

そんなある日、親友と一緒に職場から帰っていると、彼女は唐突に、 「ゆりやにモデルなってほしいねんけどどう?」と私のことをモデルに誘ってくれた。 「まっまさか…私が?!」と驚いたけど、きっと親友は私のこれまでとこれからの未来を知ってくれているから誘ってくれているんだろうなと思うと、心から嬉しくて、彼女が提示してくれた道を、一緒に歩んでいきたいと思った。

私には座右の銘がある。 「Born to make you kilig」 KILIG は 心に蝶が舞うようなロマンスが溢れたときの感情を示す言葉で、私はあなたのKILIGをつくるために生まれた。この言葉を掲げて私は生きてきた。

バースデーランウェイにモデルとして参加が決まったとき、親友は私に「KILIG」の感情をプレゼントしてくれた。

だから私は、ランウェイを歩く時、観てくれているお客様に、私がずっと大事にしてきた感情をプレゼントしたい。

KILIGは必ず笑顔を咲かせる。 私はたくさん笑顔の花を咲かせるための水撒きの役割を担える人でありたい。 その機会がきっとバースデーランウェイになるんだと思う。

『日常に夢』

創作:響あづ妙
撮影:わっちゃん

※この小説はモデルさんのインタビューを元に創作しております。

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