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たった一つの光と私

「あいちゃんのことが真っ先に思い浮かんだよ。ねぇ、やってみたら?」

そうやって友人に勧められたのは、ランウェイショーへの出演だった。 もちろん興味はあったけど、仕事もあるし、子供だっている。 だから、断らなきゃいけない。でも、気になる… そんなクヨクヨした気持ちに友人は気付いてくれたんだろう。

「子供の面倒は私がみるし、とりあえず話だけでも聞いてみたら?」と言ってくれた。 そんな気持ちに背中を押された私は、「話を聞くだけ…」とは言ったものの、心の中はやりたい気持ちでいっぱいだった。

友人が教えてくれた「バースデーランウェイ」というランウェイショーは、 一歩踏み出したい思いと向き合って、ショーで自分のありたい姿を表現するというものだった。

「私にぴったりだな。」
なんて思うのは、今の私の生活が子供と仕事のふたつだけで成り立っていたからだろう。

今の生活が嫌なわけじゃない。
子供と過ごす毎日は、宝物のように輝いていて、母としても、人としても成長できる特別な時間だ。

それでも、ふとしたときに思い出すのは、勢いに任せて「やりたい」と思ったことは何でもやっていた20代のころだった。アメリカに短期留学をして、大好きなアメ車に乗って、「将来はアメ車を輸入する!」と夢を語っていたころの私は、今はいない。

守りたい子供が生まれてから、完全に守りの体制に入った私は、「子供のために生きていく道」を選んだ。子供のために生きる道は間違っていない。
そうは分かってはいても、やっぱり思ってしまうことがある。
「このままじゃダメだ」と。

「じゃあ、どうしたらいいの?私は何がしたいの?」と自分に問いかけても、何をしていいのかが分からなくて、
答えが出ないまま、ただ悩み続けるだけの毎日を過ごしていた。

そんな時に友人から誘ってもらったランウェイショー。
きっと今、出会ったことに意味があるはず。
やりたい気持ちでいっぱいになった私は、主催者の方とオンラインで話をした。

本当は直接会って話す予定だったけど、緊急事態宣言が出されたばかりの頃で、なくなくオンラインで話すこととなった。
話をして驚いたのは、彼女の明るさと、未来を信じる力だった。

シングルマザーでなんの経験もない私が語る夢に、彼女は「できるよ!やろう!」と言ってくれる。
これまでの私なら「まあ。子供もいるし……」とネガティブに返事をしていたことも、「やれる!」と不思議な自信がみなぎってきた。

たった1回話しただけで、彼女のことが大好きになった私は、彼女が思い描く描くランウェイショーにモデルとして参加することを決めた。
子供は誰でもない、私の背中を見て育っていく。
だから私は、このランウェイショーを通して子供に努力をすることの大切さを自分の背中で見せたい。
そして、私と同じようにシングルマザーとして不安を感じている人たちに前向きな何かを感じてもらいたい。

守りたい子供と、叶えたい夢に向かって、今日ここから、思い描く未来を歩いていく。

『たったひとつの光と私』

創作:響あづ妙
撮影:わっちゃん

※この小説はモデルさんのインタビューを元に創作しております。

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